AIモデル企業の稼ぎ方が分かれ始めた週
サンプル号として全文を公開しています。2026年10月4日の編集会議で扱った話題をもとに構成しました。「編集部の検証」「編集部の見方」と書いた部分は編集部の試算と意見です。配信する号では数字と事実を一次情報で確かめて出典を添えます。
今週の3行
- ChatGPTの広告で個人向けと法人向けの稼ぎ方が分かれ始めた
- 30秒のAI動画が1本100円未満で作れる水準に入った
- オープンなモデルを自社向けに調整する人材が次の職種になる
主要ニュース5本
ニュース1米国
ChatGPTに広告が入るとAI企業の稼ぎ方はどう分かれるか
- 何が起きたか
- OpenAIがChatGPTで広告の提供を進めている。利用者の多い無料の個人利用から収益を得る道ができた。
- なぜ重要か
- これまでAIモデル企業の収入は月額課金とAPI利用料が中心だった。広告が加わると個人向けは広告で稼ぎ法人向けはAPIで稼ぐという分業がはっきりする。
- 商売への影響
- 検索広告と同じくChatGPTの中で自社の商品やサービスを見つけてもらう準備が要る。どの質問の答えに自社が出てくるかを確かめておく価値がある。
- 次に見ること
- 広告の出稿方法が企業にどこまで開かれるか。ChatGPTの中で購入や予約まで完結する導線がどこまで広がるか。
ニュース2米国・中国
AIモデル企業の稼ぎ方は3つに分かれる
- 何が起きたか
- モデルの性能競争が続く一方でGPUと研究開発の費用をどう回収するかが各社の課題になっている。
- なぜ重要か
- 編集部の見方では回収の形は3つに分かれる。広告と個人課金で稼ぐ型(OpenAI)・法人向けAPIで稼ぐ型(Anthropic)・スマホやSNSなど既存事業でAIの費用を回収する型(Google・Xiaomi・ByteDance)。
- 商売への影響
- 法人向けAPIで稼ぐ会社が多い限りAPIの料金はすぐには大きく下がらないと見ている。AIを使った自社サービスの原価計算では料金が横ばいの前提も置いておきたい。
- 次に見ること
- 各社の料金改定と法人向けの新しい契約形態。
ニュース3日本での使い方
30秒のAI動画が1本100円未満で作れる
- 何が起きたか
- 動画生成モデルの値下げと各サービスのキャンペーンが重なり生成単価が大きく下がった。
- なぜ重要か
- 編集部の検証では最高品質にこだわらなければ30秒の動画を修正なしの1回生成で100円未満で作れた。30秒あれば会社紹介やサービス紹介の動画は十分に成り立つ。
- 商売への影響
- 動画1本の制作費を前提にした商売は値崩れする。一方で広告からLPに飛ばさず動画だけで伝える作り方が現実的になる。LPは人が読むページと検索やAIが読むページに分かれていく。
- 次に見ること
- TikTokやMetaが出品者や広告主向けに動画生成をどこまで組み込むか。
ニュース4中国
中国のAI企業は上場組とモデル専業組に分かれた
- 何が起きたか
- MiniMaxとZhipu(GLM)は上場して資金を集める道を選んだ。DeepSeekやKimi(Moonshot AI)はモデル開発に集中している。
- なぜ重要か
- 中国勢のモデルはオープンに公開されるものが多く海外の動画生成サービスにも組み込まれて使われている。日本企業から見ると直接の契約先にはしにくくても使っているツールの中身に入っている可能性がある。
- 商売への影響
- 自社で使うAIツールがどの国のどのモデルを使っているかは取引先や情報管理の観点で確認しておきたい。
- 次に見ること
- モデル専業組が広告など新しい収益源に踏み出すか。どこかに買収されるか。
ニュース5日本での使い方
画像編集AIの精度が上がり動画もピンポイントで直せる
- 何が起きたか
- 画像の一部だけを直す編集特化のモデルが増え同じ画像を何度直しても背景や顔が崩れにくくなった。
- なぜ重要か
- 画像の部分修正が安定すると動画でも「ここだけ変える」修正ができるようになる。これまでは1か所直すと他の部分まで変わってしまうのが動画制作の大きな手間だった。
- 商売への影響
- 商品の色違いや季節違いの広告素材を撮り直しなしで作れるようになる。撮影とレタッチの外注費の見直し時期が近い。
- 次に見ること
- 動画の部分修正が安定して使える品質になる時期。編集部は1年以内と見ている。
数字で見る今週
| 30秒動画の生成単価 | 100円未満編集部の検証。最高品質の設定を使わず修正なしで1回生成した場合 |
|---|---|
| AIアニメ制作の検証費 | 1日1〜2万円編集部の検証。個人が毎日作り続けるにはまだ高い水準 |
| 動画生成が無料に近づく時期 | 1年以内編集部の見方 |
商売への翻訳
安くなるもの
- 短い紹介動画の制作
- 商品画像の色違いや差し替え
- 広告素材の量産
儲かる人
- AIインフルエンサーで商品を売る仕組みを回せる人
- オープンなモデルを自社向けに調整できる人
- 企業の情報をAIに読まれる形で整える人
崩れる商売
- 動画1本ごとの制作費で稼ぐ商売
- 文字と写真だけの商品ページ
- 読まれない長いLP
現場で使ってみた
同じ写真のシャツの色を何度も変えてみた
人物の写真でシャツの色だけを青・赤と繰り返し変える検証をした。汎用の画像生成モデルは1〜2回では変化が目立たないが繰り返すうちに背景や顔が少しずつずれた。画像編集に特化したモデル(FLUX系など)は何度変えても背景と顔がほぼ保たれた。
広告素材の色違いを作るなら編集特化のモデルを使い分けるのがよい。
海外の現地から
中国では農家がライブ配信で直接売っている
中国では農家が作業の様子を配信しながら農産物を消費者へ直接売る動きがコロナの時期に広がった。農協のような中間業者を通さない売り方として定着している。
買い物全体では偽物を避けるため公式の店舗から買う人が多い。一方で女性の購買力が上がりSNSで見つけて買う流れが主流になっている。お気に入りの配信者の配信を見て買うことはもう当たり前で話題にもならない。
日本への示唆(編集部の見方):生産者が自分で売る仕組みは動画生成の値下がりで日本でも作りやすくなる。
来週の予兆
- SNSに動画生成が入る:TikTokやMetaが出品者向けに動画生成を開くと商品紹介動画の作り手が一気に増える。
- モデルを調整する人材の求人:かつてのデータサイエンティストのようにオープンなモデルを自社向けに調整する職種の求人が増え始めるか。
- ChatGPTの中で買える範囲:ホテルや体験の予約などChatGPTの中で申し込みまで済む範囲がどこまで広がるか。